VOC処理装置を導入する前に検討すべき問題
(1)排出源の整理統合を行う
乾燥炉、局所排気、棟内換気等々の複数の排出源がある場合は、整理統合して排出源の数を少なくする必要があります。
(2)VOCの濃度の低い排気を処理する必要は法的にはありませんので、VOC濃度の高い部分のみの処理を行う。
例えば、乾燥炉の後半部分や換気用等の低VOC濃度の排気は従来の煙導排気を行うなど。
乾燥炉内ダクティング変更
一般的にコーティング用・ラミネート用塗工機の乾燥炉の排気能力は、通常使用での2〜3倍の能力を有しております。
また、乾燥炉の設計では、前半部分が溶剤乾燥、後半部分でキュアリングを行うことを前提に給気・排気のバランス設計等が行なわれています。(図1 参照)
表-1にある加工条件下での、各乾燥ゾーンの風量及びVOC濃度の実測値を示します。前半部分(Pre〜3Zone)で総排気量の2/3を、VOC量は99.5%を占める結果となっております。加工条件によって、数値的な違いは発生しますが、この傾向は大きく変わることはありません。
加工内容を分析し、測定結果に基づいて乾燥炉のダクティング変更が可能となれば、VOCの処理装置は2/3に小型化され、VOCの処理濃度は約1.5倍程度高めることが可能となります。(表1の場合)
表1:乾燥炉各ゾ−ンの風量及びVOC濃度の測定例(ドライラミ機 表面塗工)
Pre | 1 Zone | 2 Zone | 3 Zone | 4 Zone | 5 Zone | 冷風 | 総排気 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
風量(Nm3/min) | 10 | 55 | 30 | 20 | 20 | 15 | 25 | 175 |
VOC濃度(ppmC) | 2,200 | 8,510 | 1,240 | 430 | 110 | 30 | 10 | 3,077 |
115(Nm3/min) 4,660(ppmC) | 60(Nm3/min) 44(ppmC) |
VOC処理方法
VOC処理方法には溶剤回収方式と燃焼方式とがあり、燃焼方式の中に直接燃焼、酸化触媒式、蓄熱式、MGT燃料方式があります。
方式 | 処理方法 | 効率 (%) |
初期 投資 |
エネルギー 回収 |
ランニング 費用 |
CO2 削減 |
問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
燃焼方式 | 直接燃焼 | バーナーによる直接加熱。 処理温度は650〜760℃ |
≧98 | ○ | × | × | × | 多大なランニング費用が掛かる |
酸化触媒 燃焼 |
触媒を使用し、低温で接着酸化。 処理温度は300〜600℃ |
≧95 | ▲ | ▲ | ▲ | × | 触媒毒の影響を受ける 触媒保護のため前処理材が必要 |
|
蓄熱式 燃焼 |
蓄熱体により熱交換後、燃焼室で酸化。 処理温度800〜900度 |
≧98 | ▲ | ▲〜○ | ×〜○ | ×〜▲ | 稼働状況の変動によって、ランニング費用が大きく変わる |
|
燃料方式 | MGT燃料 | ガスタービン内で直接加熱後、触媒で酸化。 電気と蒸気のコージェネ |
≧98 | × | ◎ | ▲〜◎ | ▲〜◎ | 初期投資の回収可能 処理能力が低い |
溶剤回収 | 溶剤回収 | 多孔質に吸着させ、加熱・冷却して回収 |
≧90 | × | ▲ 再生溶剤 |
▲ 再生溶剤 |
▲ | 混合溶剤の場合は再生溶剤の利用が困難 |
燃焼式VOC処理装置の選定ポイント
排気風量とVOC濃度が常に連続的に且つ一定濃度で排出される場合は、蓄熱式脱臭装置(自然領域での運転を前提)とMGT(マイクロガスタービン)燃料方式の選定が良いと言えます。
VOCの排出量は生産設備の稼働状況により常に変動します。つまり常時、一定濃度のVOCが連続的に排出されていないのが一般的です。またVOCの排出は連続排出ではなく、間歇的に排出されているのがほとんどです。また、1直稼働と2直24時間連続稼働では、VOC処理設備の起動・停止回数が大きく変わるため、どの方式が最適化は、工場のVOCの排出状況(溶剤種、風量、濃度、時間的変動)や工場のエネルギー使用実態及び会社の環境方針によって大きくも変わってきます。
ライフサイクルコストの緻密な検討と将来、稼働変動が発生してもそれらに対応出来る、フレキシブルな処理装置の導入が必要となります。